東京は上野にある、国立西洋美術館に行ったのはもう数年前のことである。
そのときの僕は、どうしてもこの建物だけは見ようと、はじめから決めていた。
設計者(正確にいうと、基本設計者)は、スイス生まれのフランスの建築家、ル・コルビュジエである。もうずっと前に亡くなってしまわれたが、建築を少しでもかじる人は皆知っているような有名な建築家である。カーサ・ブルタスなんかでも度々特集組まれたりしてたから、建築やアートに興味がある人ならご存知の方も多いはず。とは言っても、別に有名な人の設計だからって建築ブログの一発目に持ってきたわけではなく、僕にとっての建築の楽しさを予感させるきっかけをつくってくれたのが、紛れもないこのコルビュジエ(の設計した住宅)であったということだからだ。そして、この国立西洋美術館は、そのコルビュジエが唯一日本に残した建築なのだとくれば、僕が東京に行く際、はじめからそう決めていたことも、ブログの一発目のネタとして取りあげることも理解して頂けると思う。展示作品そっちのけでも、そのプロポーションから、そのプロムナード(動線と理解して下さい)から、そのすべてを体験したかったのである。ミーハーという声が聞こえてきそうだが、百聞は一見に如かず、なのは事実である。
ピロティやコンクリートの表現、プロムナードなど、随所に彼の要素を感じることができ感動したのを覚えているが、どちらかと言うと、やはり実施設計の影響が色濃くでていたようにも思う。実施設計は、彼の弟子であった坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が担当したらしく、細部のデザインはむしろ彼らのデザイン色が強い。というのも、コルビュジエの残した基本設計図がそもそもラフなものであったらしく当然と言えば当然なのかもしれない。
この小石を埋込んだファサードなんかも、絶対コルビュジエのものでないような気がしているが、真相はどうなのだろうか。ただ個人的には、自然素材である石を使うことにより敷地(公園内が敷地となっている)に溶け込んでいることや、マッスで無機的なファサードに表情をつくっている(表面の凹凸が光を掴まえるので陰影がつく)こと、そしてそれらが別の物体としてピロティで持ち上げられて浮いているように見える(コンクリート一色だとそう見えない)ことなどから成功していると思っている。
実は内部の写真を持っておらず(撮影禁止だと思い込んでいた)、今回は、お借りさせていただいたもので紹介。やはり真骨頂は、そのプロムナードであろう。回遊性の高い空間は、場面が次々とダイナミックに変化するため、歩いていて飽きない。天井のスケールも巧いこと操作されてる感じで、その重要な要素の一つであるようにその時感じた。
これらを最も忠実に引き継いだ弟子は前川國男であるような気がする、ということが関係しているかどうかは知らないけれど、後にこの美術館の新館は前川國男が設計している。また余談であるが、この建物は国の重要文化財でもあり、色んな意味で貴重な建物なのである。近くに行った際は、また訪れてみたいと思う。
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