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中国行きのスロウ・ボード

中国行きのスロウ・ボード

実のところ、ちゃんとした小説はあまり読んだことがない。「ちゃんとした」小説とは、「Dr.スランプの小説」などといった非文学的なものでない小説を指す。ちなみにDr.スランプとは、漫画家の鳥山明さんがドラゴンボールを描く前に描いていた大人気漫画であり、僕らの年代くらいまでの人はだいたい知っている。
「あまり」というだけあって、ちゃんとした小説もいくらかは読んでいるはずだが、個人的な趣味として自主的に読んだものはほとんどなかったし、内容もあまり覚えてはいない。どちらかというと、漫画や歴史の本が好きだった。

本棚をごそごそし、自分の所持している冊数を数えてみたが、やはり数えるほどしかない。というか数えるほどもない。

・吾輩は猫である 夏目漱石
・二十四の瞳 壷井栄
・車のいろは空のいろ あまんきみこ

たった3冊である(吾輩は猫であるは、上下2冊あるので正確に言えば4冊。もっと言うなら、自分で買ったのは0冊!)これらは当然読んでいるのだが、内容はほんとうに曖昧にしか覚えていない。自分の記憶のいいかげんさを再認識した。

で、「中国行きのスロウ・ボード」という短編集を買ってみた。自分で買ったはじめての小説。と言っても中古本で260円くらいのもの。なぜ急に買ったりしたのか?それは今年の盆に熊本へと独り旅をした際、暇つぶしにと先輩に借りた一冊の短編小説による。いしいしんじの「トリツカレ男」。読みやすくて、すぐに気に入った。大したことではないが、ただそれだけのことがきっかけとなり、趣味の範囲になかった「小説」を買うにいたっている。
「中国行きのスロウ・ボード」とは、7つある短編の中の一つの表題である。これは村上春樹初の短編集らしいのだが、彼の作品を一読もしていない自分にとっては、特に思い入れがあるわけでもマニア魂があるわけでもなかったし、その点はどうでもいいことであった。むしろ純粋な気持ちで読むことができたように思う。
雰囲気で言うと、蒼々としたさわやかさと、雨の日のようなもの哀しさが同居しているような、そんな感じの作品である。カバーのイラストがほんとうによく表していると感じた。味の薄そうな不格好で濁った色の洋梨が二つ、爽やかな皿の上で寄り添っている。良いイラストだと思う。
一言でいうと、彼の文面はわかりづらい。正確にいうと、わかるのだがわからない。比喩が多いから尚更だ。しかし、その文面には独特な「間」と「装飾」がある。その間と装飾は、その景色や時間、心情を読み手に伝えるために重要な役割をはたしており、どちらも必要なものとなっている。彼はその辺の言葉の選択とレイアウトが非常に巧みなんだろう。だから、「わからない」けど「わかる」のかもしれない。
もう一つ、構成の仕方も巧いと思った。まず、出てくるキャラクターがほんとうに少数である。キャラを限定することで情報過多を避け、作品を強いものにできるし、読者はキャラを常に意識できる。次に、みな少しだけ変わった習性を持っていることがあげられる。これは「完全に個性的」なキャラクターでないことがミソであろう。つまり、フィクションでありながら私たちの日常に近いために、読者は本の世界へと入り込みやすい。そしてそんなキャラ達が、(前述したように)彼の選んだ言葉に包まれ、配され、不思議なバランスの世界観が生まれているような気がする。それはキャラ以外の部分にも言える。

などと、感じたことを並べてはみたが、村上春樹という作家の作品性についてはまだ何も語ることはできない。ここで語れるのは、あくまでこの小説の感想のみである。なぜ中国なんだ?、中国とはなんだ?、中国は、中国であって中国でないのである。
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